一時の恋でも。
| Gallery・Ⅰ | 手塚国光 |
「・・・うん、大丈夫。」
風邪でもひいたのか。
私の体はとてもダルく、具合が良くなかった。
「保健室行ってきたら?」
「ううん、大丈夫だから。」
笑ってみたけど、私はきちんと笑えているかな?
友達は心配そうな顔をしていたけれど、とりあえず私を信じてくれたみたい。
でも・・・・。
(頭がクラクラする・・・)
大丈夫じゃないのかも、なんて思ったときには遅かったみたいで。
私の視界は大きく揺れた。
そして・・・・。
ドサッ。と、倒れ込んだ。
(あれ・・・?)
本来は冷たく堅い床に触れている筈なのに。
私の体は暖かい物に包まれている。
すると。
「だから無理をするなと・・・言っただろう。」
少し低めの。
慣れ親しんだ声が頭上から聞こえてきた。
ようやくボーっとする頭で状況を理解出来た。
そうだ、私は倒れ込んだ所を国光に助けられたんだ・・・。
いわば私は恋人である国光に抱きしめられている形で。
今更になって恥ずかしさがこみあげてきた。
「く、国光・・・あの・・・。」
「すまないが俺はを保健室に連れていく。後を頼む。」
「え?国光!」
友達は国光を見て少し顔を赤くしながら頷いた。
それを確認すると、国光は私の体を少し離し
「行くぞ。」
そう言い放つと無言で足早に歩き出したのだ。
私はその大きな背中についていくのが精一杯で。
ただの一度も此方を振り返らずに、黙々と歩く国光を見ると何だか寂しくて・・・。
そんな事を考えていると、国光は保健室の前を素通りしていった。
「国光・・・?保健室なら此処・・・」
私の言葉を聞いたのか聞いていないのかわからないけれど。
国光は足を止めず、玄関の方へ歩いていった。
ポカンと少し口を開けて突っ立て居ると国光が顔を出し
「何をしてる、早く来い。」
と私の靴を見せて言った。
私は抵抗する気力もなく、国光の後をついていった。
外は意外と良い天気で日差しが少し眩しい・・・。
国光が何をしたいのか分からない。
これって結局はサボリってやつになるんじゃないかと、少しドキドキした。
目の前にある大きな背中を見つめて、思う。
ああ、まただ。
テニスの試合を見ている時、いつも思う。
私とは違う・・・頂点へと行ける人。
あの人は本当に。本当に遠い所まで行ってしまう人なんだって。
そんな時思ってしまう。
遠くになんて行かないでほしいって。
私の元に居てほしいって。
・・・マネージャー失格かな。
テニスをしている国光が好きなのに、ふいに思ってしまう。
お願い、置いていかないで。
私がピタリと足を止めても、国光は何ら変わる事なく歩き続ける。
いや・・・・。
置いて行かないで・・・!
「国光!」
大きな。大きな声で呼ぶと。
国光は驚いた様な顔で、後ろを振り返り。
血相を変えて走ってきた。
「すまん・・・具合が悪いというのに気遣ってやれずに・・・。」
酷く哀しそうな顔。
心配をしてくれたのかな・・・?
「少し休もう。その辺に座る所があれば良いんだが・・・。」
「・・・国光。」
「なんだ?」
「何処へ行くつもりだったの・・・?」
私がそう問うと国光は少し間を置いてから。
「公園だ。」
と一言そう答えた。
「公園・・・?」
「ああ。に・・・見てほしかったんだが・・・。」
「大丈夫、公園まで歩くから。」
ニッコリ笑ってそう言うと国光はそうか。と言って軽く笑った。
それからは国光が歩調をゆるめてくれて。
私の隣りをゆっくりと歩いてくれた。
それが何だか嬉しくて。
幸せだった。
「うわぁ・・・凄く綺麗・・・。」
「だろう。」
目の前には、綺麗に花々が咲き誇る花壇。
まるで楽園のよう・・・・。
「偶然見つけたんだがな、が好きそうだと思って・・・な。」
「凄い・・・こんな所があったなんて・・・。」
あまりに綺麗さに感動して、涙が出そうになったけれど。
国光を困らせるだろうと思って私は我慢した。
「有り難う・・・・。」
「いや・・・。それより体の具合は良いのか?」
そういえば、と自分の体調を確認してみる。
「ふふ・・・国光と居たらすっかり治っちゃったみたい。」
私が笑うと、国光もほんの少しだけれど笑ってくれた。
「もう無理はするなよ・・・?」
「うん。・・・ごめんなさい。」
「どうして謝るんだ?」
自分の心のやましさを口に出来ずに、私は下を向いた。
「・・・?」
「国光は・・・。国光はずっと前だけ見て歩いてね。」
私の言葉の意味を理解してかしていないのか。
国光は顔を少ししかめて、ああ。と言った。
そして私の顔を真剣に見つめて。
「もちろん・・・お前もついてきてくれるのだろうな・・・?」
その言葉の意味を理解した時。
とても嬉しくて。恥ずかしくて。
私は一気に顔の熱をあげた。
「私で良いなら・・・・。」
「お前でなければ駄目だ。」
国光は私の欲しい言葉をいつだってくれる。
ああ。だから私は好きなんだ。
優しく。
優しく微笑んで。国光は私に優しい口づけをくれた。
「私…授業サボったの初めて…。」
「俺もだ…。」
この恋は。
永遠かどうかは分からない。
きっと国光は私なんかより素敵な人と出会って。
恋に落ちてしまうかもしれない。
でも。
でもせめて。
この花達が散るまで。
夢を見させて下さい。
この人を愛して良かったと。
思わせて下さい。
END
懺悔 in 手塚ドリーム
えー・・・本当に遅くなってしまいました;ありえないですよね、ホント。 きっとリクして下さった本人も忘れているでしょうという感じです(笑) シリアス系を目指してみました!あやうく悲恋になりそうだったのです; 危ない危ない・・・。 手塚というキャラのドリームを描くのは初めてだったので かなり彼らしくないだろうという所も多々見られると思いますがその辺は眼を瞑って下さいませ。 こんなので良ければまた読んでやって下さいませ。
ジョセ子さま
(閉鎖なさいました)
1周年記念リクエスト募集に手塚さん夢をお願いしてしまいました。シチュエーションは、お天気が良く、心地よい風の中、 部長と授業をサボるというイメージでお伝えしたところ、部長にヒロインを連れ出してもらうという密かな私の夢が叶えられとっても幸せ気分でした♡実直な手塚さんのさり気ない優しさが十分伝わってきて、ますます手塚さんのことが好きになりました♪私の大好きなお花まで取り入れてくださって大感激です。素敵な手塚夢を本当にありがとうございました♡
夢野菜月(2025.2.3/リニューアルにて再up)
1周年記念リクエスト募集に手塚さん夢をお願いしてしまいました。シチュエーションは、お天気が良く、心地よい風の中、 部長と授業をサボるというイメージでお伝えしたところ、部長にヒロインを連れ出してもらうという密かな私の夢が叶えられとっても幸せ気分でした♡実直な手塚さんのさり気ない優しさが十分伝わってきて、ますます手塚さんのことが好きになりました♪私の大好きなお花まで取り入れてくださって大感激です。素敵な手塚夢を本当にありがとうございました♡
夢野菜月(2025.2.3/リニューアルにて再up)

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